2025年2月23日日曜日

「書道をやりにきました。」

書道をやりにきました

 偶然見つけたローカル線の動画。それは、彼女が毎日乗っている列車だった。窓の外に広がるのは田園風景。何気なく過ぎていく景色の中に、彼女の決意がある。乗り継ぎをしてまで通う理由を問われたら、答えはただひとつ——「書道をやりにきました。」それ以上の説明はない。筆を握るためにこの学校を選び、遠回りでも迷わずこの道を選んだ。

 今年の夏、上級生が引退すれば彼女は部長となる。受け継ぐのは、ただの役職ではない。代々の先輩たちが積み上げてきたもの、大切に守られてきた伝統、そして何より、自らが磨き上げてきた筆の魂。そのすべてを背負い、さらに先へと進んでいく。

 駅に降り立ち、校門をくぐるたびに、彼女は確かめる。ここに来た理由を。筆に込めた想いを。そして、どこまでもまっすぐに——「書道をやりにきました。」



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