2025年2月28日金曜日

絆を受け継ぐ刻(とき)

 春の訪れを告げる風が、校舎の窓を優しく揺らす。大曲高校では、明日の卒業式に先立ち、本日、同窓会青麻会への入会式が執り行われた。


 会長をはじめ各支部長の方々が見守る中、同窓会長が餞(はなむけ)の言葉を贈る。先輩たちが築いてきた伝統の灯を、新たな世代へと託す瞬間。静寂の中に響くその言葉は、一人ひとりの胸に深く刻まれた。


 そして、新入会員へ記念品が手渡されると、代表の生徒が壇上に立ち、未来への抱負を力強く語る。その声には、学び舎で育まれた誇りと決意が宿り、ここから始まる新たな航路への覚悟が滲んでいた。


 こうして、時代を超えて受け継がれる絆が、またひとつ、確かなものとなった。






2025年2月26日水曜日

またまた

 先日、賞状の記名を盛大に間違えたばかりなのに、またミスをやらかした。卒業式に向け、来賓席の前垂れを揮毫した。本校には書道担当の教員(私)がいるので校内の案内や式場の案内や掲示はワープロなどは一切使わせず、すべて私が書いている。書道担当教員の意地である。


 何カ所かに掲示するので、綺麗な紙を使ったり大きさを変えたりできるように、原稿を書いてコピーができるようにした。決して、※ひこがしたわけではない。ここで、余計な斟酌をして「掲示の係の先生が楽できるように必要な分をコピーしておこう」と思った。ところが、切り分けたら切り口がガタガタ。仕方なくもう一度コピーを……と思ったら、切ったのはオリジナル原稿だった。※「あやすか」

 仕方がないのでもう一度書き直した。写真は引いた罫線が見やすくする昭和からの相棒のトレース台。通販で買ったが、送り先の郵便番号が5桁である。

※ひこがすー「怠ける」や「手を抜く」の意の秋田弁。

※あやすかー英訳すると「Oh my god」の秋田弁。



2025年2月24日月曜日

発表の場

 昨日、私も出品した県展地域展が終了した。最近の県展における中学生や高校生の活躍は素晴らしいことだが、その一方で、大人のアマチュアにとっての発表の機会が減少している現状には矛盾を感じる。


 若い世代の活躍を推進するあまり、仕事の合間を縫ってコツコツと取り組んできた大人のアマチュアが、その成果を発表する貴重な舞台を奪われているのは本来の姿ではない。中学生や高校生には「U18」などの新たなカテゴリーを設けるべきであり、それによって若い世代の活躍の場を確保しつつ、大人のアマチュアにも十分な発表の機会を与えることができるはずだ。




2025年2月23日日曜日

「書道をやりにきました。」

書道をやりにきました

 偶然見つけたローカル線の動画。それは、彼女が毎日乗っている列車だった。窓の外に広がるのは田園風景。何気なく過ぎていく景色の中に、彼女の決意がある。乗り継ぎをしてまで通う理由を問われたら、答えはただひとつ——「書道をやりにきました。」それ以上の説明はない。筆を握るためにこの学校を選び、遠回りでも迷わずこの道を選んだ。

 今年の夏、上級生が引退すれば彼女は部長となる。受け継ぐのは、ただの役職ではない。代々の先輩たちが積み上げてきたもの、大切に守られてきた伝統、そして何より、自らが磨き上げてきた筆の魂。そのすべてを背負い、さらに先へと進んでいく。

 駅に降り立ち、校門をくぐるたびに、彼女は確かめる。ここに来た理由を。筆に込めた想いを。そして、どこまでもまっすぐに——「書道をやりにきました。」



2025年2月21日金曜日

賞状と私の果てしなき戦い

  一昨日、賞状を書いて信じがたいミスをやらかした。リベンジを誓い、吹雪の晴れ間を縫って賞状用紙を買いに行く。幸いにも本文も自分で書いていたので、ついでに書き直した。

 そもそもの発端は、少しでも楽をしようとスケベ根性を出したことにある。だから今回は潔く「○○○○生の部」を筆で書くと決め、印刷原稿には入れなかった。原稿ができて、そして印刷。慎重に位置合わせをして「よし、完璧!」と、ついに量産体制に突入しようとした――その時、異変に気づいた。なんか変だ。

……天地が逆さまだった。

 一瞬、時が止まる。なんということだ。己の馬鹿頭はどこまでイカれているのか。愕然としつつも、最悪の事態を回避できたことに安堵する。

 気を取り直し、無事に印刷が完成。明日は記名作業だ。だが、この戦いが本当に終わるのかは、まだ誰にもわからない。

あんびりーばぼー」一昨日の信じがたいミスはこちら。



2025年2月19日水曜日

あんびりーばぼー

 賞状用紙が届いた。昨年、「小学一年生の部」をすべて筆書きし、あまりの面倒くささに泣きを見た。そこで今年は少しでも楽をしようと、「○○○生の部」と最初から印刷しておけばいいという画期的な(?)手法を思いつく。小学生でも中学生でも高校生でも対応できるじゃないか! これは勝ったも同然だ!

 さっそく筆を執り、心地よい筆の滑りを楽しみながら一区切り。順調そのもの。ふと作品を見直すと、そこには堂々とした文字が並んでいた。

「小学一生の部」

「?」……「年」が、ない。

 一瞬で血の気が引いた。「小学一年生」ではなく「小学一生」――まるで一生小学生のまま抜け出せない呪いの賞状になってしまった。

 予備の用紙では到底足りない。「間違えたので印刷しなおしてください」とも言いにくい。ならば、自分でやるしかない。明日、新しい賞状用紙を買い、本文を印刷し直し、再び筆を執ることに決めた。

 だが、一つだけ確信した。「○○○生の部」と楽をしようと本文の印刷原稿を書いたときに、スケベ根性を出したことが今回の悲劇の幕開けだったのだ。最近このような考えられないミスが多い。


2025年2月18日火曜日

環境を守る書道の手

 大曲高校書道部は「第15回ニチバン巻芯エコプロジェクト」に参加し、感謝状を受領した。このプロジェクトはセロハンテープや布粘着テープの巻芯を回収し、リサイクル資源として活用する環境保全活動で、全国の学校や団体が協力している。

 書道部は書道パフォーマンス用の巨大な紙を作成する際に使う巻芯を回収し始め、「紙と向き合う者として、使い終えたものにも新たな役割を与えたい」という思いから回収を始め環境保護の意識を持ちながら継続的に取り組んできた。そして、廃材だった巻芯が新たな資源となることを願いながら提供し、その活動が評価された。また、反故紙の再利用など、資源を無駄にしない工夫も行っている。書道部は、今後も書の表現と環境への配慮を両立させて活動を続けていく。




2025年2月16日日曜日

証書ニ記シ終エタリ

 疲レヲ知ラズ

手ヲ止メルコト無ク

筆ヲ執リテ名ヲ記ス

春ノ光ヲ想ヒ

旅立ツ若人ノ名ヲ

一ツ一ツ確カメツツ

雑念ニ惑ワサレズ

慣レタ手ツキデ書キ進メ

終ワレバ静カニ筆ヲ置ク

アア 今

達成ノ息ヲ吐キ

机ニ指ヲ走ラセバ

滑ラカナル紙ノ温モリ

ヤリ切ッタリ

清々シキ心持チニ

ナリタリ



2025年2月15日土曜日

果てなき白

 筆を執る、幾度も。

紙の海に、名を刻む。

ひとつ、またひとつ。

幾千の夢を背負ひ、墨は流れ、筆は舞ふ。

終はりは來るのか。

幾許の時を越へても、

目の前の白は尽きることなく、

新たなる名が、またひとつ。

これは旅路か、修行か。

書けども書けども、終はらぬ道。

されど、ひと筆ごとに魂を込め、

送り出す、未來を抱く手のひらへ。

筆を執る、幾度でも。

夜が明けるまで、墨が乾くまで。

そしてふと、白き海の果てに、

最後の一枚が、静かに待つ。



2025年2月13日木曜日

シャレた記念品

 息子が高校生の頃、保護者としてPTA総会に出席した。そこで、退任される役員に感謝状とともに記念品が贈られた。記念品は画家が描いた絵だった。私はその洗練された記念品に感銘を受け、自分も特別な場面では自分で書いたものを贈りたいと思った。

 私は幸運なことに母校に勤務し、同窓会の校内幹事長を務めている。退任される同窓会役員や部活動でお世話になった方には、色紙を揮毫し額に収めて贈ることにしている。たとえ拙い筆であっても、額におさまれば不思議とそれなりに見えるものだ。しかし、それ以上に、私の書が「感謝」と「出会いの大切さ」を伝えることができれば、それこそが何よりの贈り物になるのではないかと思う。

 以前、小学校のPTA会長を3年務め退任する際、いつもそうしているように感謝状を書いた。そして、自分で書いた感謝状を受け取った。



2025年2月11日火曜日

スピードスター

  高校生の頃からお世話になっていた先生によく「そくひつだ」と注意された。私は「※側筆」だと思って、「いつも筆は立てて書いているけどなあ」と疑問だった。しかし、何年も経ってからようやく気がついた。「そくひつ」とは「側筆」ではなく「速筆」、つまり書くのが速すぎると注意されていたのだと。


 もともと堪え性がなく短気な私は驚くほどの速さで書く。かつては6クラス分の卒業証書を一晩で仕上げたこともある。しかし最近は、賞状を書く際に筆を硯に引っかけて用紙に墨を飛ばしたり、画がくっついたりと、信じられないミスをすることが増えた。そこで、さすがに少しは落ち着こうと意識し、ゆっくり書くようにしている。


 少し大人になったかな。……と思った矢先、仕上げたばかりの賞状の上に、袖がスーッと滑り込んだ。そう、乾く前に触ってしまったのだ。どうやら、落ち着いても別の問題はついてくるらしい。


※側筆(そくひつ)とは、書画において筆を傾けて穂の側面を用いて書く用筆法。これは基本的に書の線としては悪い線と言う人もいる。



2025年2月10日月曜日

こだわり

 書道展など筆文字の魅力を伝える場において、その趣旨にふさわしい在り方があるのではないか——そんな時にこだわりがある。

 たとえば、書道展の賞状。書家が関わる催しでありながら、賞状がワープロで作成されるのはどこか違和感を覚えてしまう。せっかく筆文字の美しさを称え広める場であるのだから、その証として授与される賞状もやはり毛筆であるべきではないかと思う。

 そんな思いから、それを提案して賞状の本文や記名を書く機会があれば、迷わず引き受けることにしている。やはり、書の世界に生きる者として、こうした場こそ筆の文字が息づいていてほしい。毛筆で書かれた文字には、手で書くからこそ生まれるパワーがある。それが伝わる場を大切にしたい——それが、私のささやかなこだわりである。

 しかし、こだわって担当したはいいが、書いてみると己の下手さに愕然としてしまう。でも、大丈夫。大曲高校書道室には頼もしい「緑のジャージを着たおじさん」が住んでいる。



2025年2月9日日曜日

強敵出現

 2月になると、いよいよアレとの戦いが始まります。毎年恒例、私の強敵…そう、卒業証書です!世の中いろんな考えがあるようですが、私はこれを書道教師の重要な仕事だと思っています。

 さて、今日の天気はまるで気分屋の神様が操っているかのよう。恐ろしいほどの青空が広がったかと思えば、次の瞬間には猛吹雪!「お天気の神様もお天気屋って言うんだべが?」と、ひとりツッコミを入れつつ、日曜の学校でコツコツ筆を握っています。

 少しは上達したかと思いきや、己の未熟さに毎年愕然…。それでも最後は、緑のジャージを着たおじさんに助けてもらいます。おじさん、お願いします。



2025年2月8日土曜日

丸徳の芋きんつば

 大曲の学校に通っているなら、ぜひ知ってほしい名物がいくつもある。

 さて、今日の大曲高校書道部は2年生が模試のため、1年生だけの活動日。市外から通う部員もいるので、「大曲の学校に通っていて丸徳の芋きんつばを知らないなんて※ばしだ!」ということで、差し入れを決行!


 ふわっと甘くて、ほくほくのお芋の味に、みんな思わずにっこり。「おいしいっ!」の声が次々とあがり疲れも吹き飛ぶ。大曲の味、しっかり心に刻まれたようだ。

※ばし-「ウソ」の意の秋田弁。

(使用例)ばしこぐな→ウソをつくな。



2025年2月7日金曜日

この文化部がすごい

 大曲高校書道部が読売新聞東京支社から刊行された週刊新聞に取り上げられ、それが2020年に書籍化!その名も 『部活魂!この文化部がすごい』。全国の文化部が紹介され、仲間とともに駆け抜けた「10代の本気」が詰まった一冊だ。

 昨日、ふとした瞬間に気づいた。「あれ?今の部員たち、この本のこと知らないんじゃ…?」 そこで部活動中に紹介してみたら、みんな目を丸くして驚き、そして誇らしげにページをめくり始めた。次々と回し読みしながら、「すごい!」「こんなふうに書かれてるんだ!」とワクワクした声が飛び交う。かつての先輩たちの熱い思いが、時を超えて今の部員たちへとつながっていく——そんな瞬間を目の当たりにした。

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2025年2月6日木曜日

緑のジャージを着たおじさん

  旧校舎の書道室には、ひそかに語り継がれる都市伝説があった。「緑のジャージを着たおじさん」が住んでいる——というものだ。書道室に作品を置きっぱなしにすると、夜中にひょっこり現れ、そっと手を加えてくれるらしい。まるで書道界の座敷童。

 

 新校舎に引っ越して1年ちょっと。ふと気づくと、どうやらおじさんも一緒に引っ越してきたようだ。先週、色紙作品を書こうとしたものの、まず墨を擦る時点で失敗。そして昨日、リベンジ。ところが、書いた作品を見て己の未熟さに絶望し、色紙を放置して帰宅。

 

 そして今日、恐る恐る見てみると——あれ? 昨日のへたっぴ色紙が「え、いいじゃん?」な仕上がりに!?

 

 どうやら、新校舎の天井にも、あのおじさんは健在のようだ。

「新しい住み心地はいかがですか?」

おじさんのジャージは昭和チックなデザインで、2本線が入っているヤツらしい。



2025年2月5日水曜日

吹雪の中のエール

今日は銀行や支払い先をまわりました。その道すがら、思いがけず多くの方に声をかけていただきました。「大曲高校書道部、大活躍ですね」「頑張ってください!」――そんな温かい言葉をいただくたびに、不思議な気持ちとともに胸が熱くなりました。

 

日本列島に寒波が来襲した今日は、全国から雪のニュースが伝わってきました。大曲でも時折青空がのぞくものの、時々猛吹雪で前が全く見えなくなるほどの荒れた天気でした。そんな中でも、「応援しているよ」と声をかけてくださる方々がいて、その言葉が寒さを忘れるほど心に沁みました。このような猛吹雪は、強豪ひしめく大会の中での私たちのようです。逆境に負けず、一歩ずつ前進していく姿勢を大切に、これからも頑張り続けます。

 

私たちは、ただ書に向き合い、自分たちのやりたいことに夢中になっていただけでした。けれど、私たちの活動は思いのほか市内の多くの方の目に映り、心に届いていたのだと気づかされました。支えてくださる皆さんの存在を知り、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。これからも、自分たちらしく精いっぱい筆をふるっていきます。応援、本当にありがとうございます!



2025年2月4日火曜日

あぴーる

 秋田県には芸術科書道を担当する教員はごくわずかしかおらず、まるで絶滅危惧種のような存在です。そんな状況の中で、その価値を少しでも広めるために、私は賞状への記名をはじめ依頼があれば二つ返事で引き受けています。講演会の演題や校内の案内掲示など、さまざまな書き物を手掛けています。やはり、手書きの文字には人のぬくもりと力が宿るものです。こうして地道に書の魅力を伝え続けています。  先日も、賞状への記名を依頼されました。もちろん快く引き受けすぐに書き上げました。表彰式用の賞状は事前に鉛筆で仮書きされていることが多く、名前を確認しメモした後、消しゴムで下書きを消してから毛筆で清書するため意外と手間がかかります。しかし、今回の賞状は付箋に下書きされており、メモ書きや消しゴムを使う必要もなかったためとても楽に仕上げることができました。  賞状を書くときは、ただ文字を並べるのではなく、その賞を受け取る生徒の努力や喜ぶ姿を思い浮かべながら筆を運びます。「おめでとう、よく頑張ったね」という気持ちを込めて書くことで、文字にも魂が宿ると信じています。そんなふうに、少しでも手書きの魅力が伝われば嬉しいものです。

#竹村天祐#大曲高校#大曲高校書道部#青麻会



2025年2月2日日曜日

彩るー楽哉

 秋田県書道連盟新春小品書展が1月30日から2月2日まで、秋田市の秋田魁新聞社1階の「さきがけホール」で開催されており、これに出品しています。出品作品は半紙に書いた「楽哉」。新しい一年が喜びに満ちたものになるよう願いを込め、この字を選びました。
 もともと私は王鐸や張瑞図など、明清時代の行草を主に取り組んでいましたが、最近は篆書の造形の面白さにも魅力を感じています。そんな中、先日開催された書道パフォーマンスグランプリ決勝大会では、本庄東高校が優勝。その紙面は従来のカラフルなものではなく白黒で構成されておりその発想に驚きました。パフォーマンス書道といえば色彩を用いた演出が主流ですが、今回のように「常識を覆す」構成にびっくりしました。
 それならば逆に、白黒の書道作品に色を添えたら、新年らしい希望を表現できるのでは? そう考え作品に彩りを加えました。より楽しい「楽」にするために。
「えっ、なんで青と黄と赤なの?」
「うん、それしか手元になかったんだよね!」
 偶然の色選びもまた、楽しさの一部。新春らしい晴れやかな気持ちが伝わるよう、筆を運びました。今年も、書の探求を続けながら、新たな表現に挑戦していきたいと思います。