サクラサク
新校舎建設のため卒業記念の植樹たちも、大曲高校の歴史を見守ってきた大木たちも、すべて伐採された。たった1本残った自転車置き場の桜がひっそりと咲いた。風に枝を揺らし、花をこぼしていた。
あの木は覚えているのだろうか。
四月、真新しい制服に袖を通した新入生たちが、不安と期待を胸に門をくぐったことを。放課後、うつむきながら自転車にまたがったあの子の、涙に濡れた頬を。三年間使い込まれたサドルに最後の別れを告げて、卒業していったあの春の日を。
校庭の風景が塗り替えられていく中で、その桜だけが、旧きものたちの記憶を抱いて立っている。
まるで、誰かの帰りをずっと待っているかのように。それは、かつてこの場所に確かにあった時間の証し。そして、静かに咲くことで語りかける、最後の証人だった。
あの木は覚えているのだろうか。
それは、かつてこの場所に確かにあった時間の証し。そして、静かに咲くことで語りかける、最後の証人だった。
#竹村天祐#大曲高校#大曲高校書道部#青麻会#大東文化大学
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