2019年7月8日月曜日

書友同人展
▲梅(全紙1/2)

【釈文】

微雲淡月迷千樹 流水空山見一枝      (高啓の詩より)

【作成意図】
 アクリルのないパネルに貼ることにより、作品を遮るものがなく直接作品を見ることができる。その裸感が作品を身近なものとしてみることができるため、作品に親近感がわくのがねらいである。

 4枚の紙の間隔はできるだけ狭くして、隣り合う文字と文字の響き合いを重視した。潤筆(墨をつけてにじませてかいたところ)の隣には渇筆(カスレを出した文字)を配置し、またその隣には潤筆にしてサンドイッチ状態で両者を引き立たせている。

 印は増澤先生に彫っていただいた白文と朱文をセットにして押しました。やっぱりいいなあ。

レモンの味

書友同人展
▲レモンの味(半切)

【釈文】
二歩進み視界に入ったコンビニの苺アイスは初恋風味

                  田村萌々花の和歌


【作成意図】
 高校生の感性はみずみずしい。そして、何より「恋の歌」は見る人をあっという間にその人の青春時代に引き戻し、甘酸っぱいレモンのような味を思い出させる。

 この歌には「苺アイス」が登場するが作品タイトルはそのまま「苺の味」とはせず、あえて青春時代の代名詞である「レモン」の味にしたところが直接的ではなくシャレている。と本人は思っている。やっぱり青春は「レモン味」でしょう。

避暑

【釈文】
白楽天詩

六月灘声如猛雨 香山楼北暢師房
夜深起倚蘭干立 満耳潺湲満面涼

紗巾草履竹疎衣 晩下香山踏翠微
一路涼風十八里 臥乗藍輿睡中帰

六月の早瀬はすさまじい雨のようである。香山寺の高楼の北側にある暢禅師の僧坊。夜更けに起き上がり手すりにもたれて立っていると、耳いっぱいに水の流れる音がきこえ、顔一面には心地よい涼しさがただよう。
うすぎぬの頭巾、わらぐつ、竹の繊維で作った涼しい服装で、香山に避暑し、日ぐれに山の八号目を歩いて帰る。家までの十八里をあじろかごに臥して涼風に吹かれながら酔って帰るのは、なんと気持ちのいいことよ。

【制作意図】
 紙が縦に長いことを利用して、王鐸の古典をイメージしながら下へ下へと連綿を多用して書き進めた。作品の根底にある避暑激しくダイナミックな文字の動きは暑い季節をあらわし、それに対照的な「涼しさ」をやや薄めの墨で表現した。暑さがあるから涼しさが生きるのであるから、動きと墨書を対照的にした。

追悼

書友同人展

作品解説「追悼」

▲追悼(全紙)


【釈文】

 わすれなぐさ

ながれきしのひともとは
みそらのいろのみづあさぎ
なみ ことごとく くちづけし
はた ことごとく わすれゆく

ヰルヘルム・アレントの詩

 今年、篆刻家の増澤土龍先生がなくなりました。大変お世話になっていました。そこで別れを悲しむ詩に、思い出の印を押しました。

 そして、この作品には増澤先生から彫っていただいた思い出の印を押しました。

【右の印】
「学古」

 古典は自分の作品のよりどころです。また、お世話になった故加藤先生がこの印を押している作品を拝見し、「これはいい言葉だ」とまねっこしました。増澤先生に一番最初に彫っていただいた印です。いつも好んでこの印を押しています。

【右から二番目の印】 
「天祐」

 上の印といっしょに増澤先生に一番最初に彫っていただいた印で、気合いの入れた作品に押しています。オーソドックスな作りですが、デザインが洒落ています。

【中央の印2顆】
「天祐」
【右】 
「ほれ」と増澤先生がくださった印。特に彫ってくださいとお願いもしていませんでしたが、お目にかかったときに頂戴しました。

【縁なし印の補刀】
 調和体作品に押したいなと、縁なし印を作ってみました。先生に見せたら「縁なしか」とおっしゃいながら補刀してくださいました。


【最後の印】
「天祐」
 一昨年、「調和体作品に押す印」と増澤先生にお願いして彫っていただきました。結局、先生から彫っていただいたのはこれが最後の印です。「また、こんどお願いしよう」と気楽に考えていましたが・・・・。もっとたくさんお願いしておけばよかった。

【最後の姓名印】
「竹村美範」
 増澤先生が彫ってくださった最後の姓名印。これで「姓名印と雅号印」をセットでおすことができます。


[参考]詩の解説

俳句でDiary ─ できるかな?

https://ameblo.jp/haiku-de-moemoe/entry-12154650387.html