2025年1月11日土曜日

世界征服

 実は私は大曲高校の書道部顧問だが、それは世を欺く仮の姿。本当の正体は、世界征服を目論む秘密組織ショッカー(書家)である。今回の任務は「書道パフォーマンスグランプリ決勝大会」という名目のもと、手下である部員たちとともに首都圏を征服することだ。


 宿泊先のホテルでは、「私は学校で書道を担当している教員で、これ、おみやげです」とフロントに自作の額入り葉書を手渡した。100円均一のお店で買った額に、大曲らしさを象徴する花火の下絵が入った葉書。そこに力強く「愛」の一字を書いた。原価わずか140円(葉書40円+額100円:税抜)でありながら、その背後には深遠な書道作戦が隠されている。贈り物を通じて、学校の印象をさりげなく上げること――これがショッカーの書道の初動作戦だ。書で心を動かし、信頼を勝ち取る。それは小さな一歩に見えるが、着実に征服への足がかりを築いていく。


 ショッカーの最終目標は自分たちの書作品を世界中に展示することで、文字の力で地球を掌握することにある。例えば、以前お世話になっている友人が店長を務める店に、お礼の作品を贈ったときのこと。私は謙遜して「トイレの片隅にでも飾ってください」と伝えた。すると、驚いたことに本当にトイレに飾られていたのだ。「なんて素直なんでしょう」と感心しつつも、私は密かに微笑んだ。トイレというプライベート空間こそが、ショッカーの作品をじっくり眺める理想的な場所なのだから。


 そして、週末には手下たちがさらなる征服を果たすために動き出す。彼女らは巨大な紙を用い、文字通り「大きな足跡」を残すべく、日本有数の規模を誇るイオンモール網張新都心を舞台に、堂々たるパフォーマンスを繰り広げる予定だ。「書の力で世界を変える」という壮大な夢に向け、部員たちは無邪気に、しかし着実に計画を進めている。


 こうして私は表向きは教育者として裏ではショッカーとして、今日も筆を握る。征服の道はまだ遠い。しかし、書という静かなる武器を携え、私たちは確実に世界を塗り替えていくのだ。つづく。



0 件のコメント:

コメントを投稿