2025年3月6日木曜日

卒業の証を包むもの

 大曲高校同窓会青麻会から卒業生へ贈る記念品は、特別な卒業証書ホルダー。二つ折りの仕様ながら、マチがあるため折り目をつけずに収納できる工夫が施されている。


卒業証書は、本文も記名も、そしてそれを包む表紙に輝く金文字も――それを記したのは、大曲高校の卒業生である私。
母校への誇りと、旅立つ後輩たちへの祝福の想いを込めて、一筆一筆、心を尽くした。

卒業という大切な節目に、自分が身につけた技術で関わることができる幸せを、改めて感じる。学び、積み重ねてきたものが、こうして形となり、後輩たちの門出を彩ることができるのは、この上ない喜びだ。このホルダーが、卒業証書とともに、それぞれの未来へと続く大切な証となることを願っている。






2025年3月3日月曜日

復活の歌声――伝統が息を吹き返す瞬間

卒業式の終幕にふさわしい、あの歌声が帰ってきた。

途切れた伝統が、ついに蘇ったのだ。


50年、いや、それ以上の歳月を超えて受け継がれてきた旋律。卒業式の最後を飾る「卒業の歌」。その歌は、幾世代もの卒業生たちの旅立ちを見送ってきた。しかし、コロナ禍がもたらした沈黙が、その響きを奪った。制限された出席者、縮小された式典、そして封じられた歌声――あの時、校歌は音を失った。


だが今年、ついにその沈黙が破られた。

50年前から同じ曲、同じ曲順、同じ楽譜。響き渡るハーモニーは、ただの歌ではない。これは、母校の誇りであり、卒業生の決意であり、50年を超えて受け継がれる魂そのものだ。


高校数あれど、卒業式に校歌を混声四部合唱で歌える学校がどれほどあるだろうか。

それができるのが、この学校なのだ。


歌声が天井を突き抜け、式場に広がる。

その瞬間、時代を超えてつながる想いが、ひとつになった。







2025年3月2日日曜日

魂の返事

 大曲高校は3月1日、卒業式を挙行した。厳かな空気の中、卒業生が名を呼ばれるたびに、一つひとつの返事が響く。だがその瞬間、式場の空気が一変した。


 突き抜けるような、気迫あふれる声――。それは、ただの返事ではなかった。魂を込めた一声が、会場を震わせた。発したのは、書道部の3年生10名。鍛え抜かれた筆が生み出す力強い線のごとく、彼女たちの声は揺るぎなく、凛としていた。その響きは天井を突き抜け、心の奥に刻まれた。まるで筆が紙に命を刻むように。彼女たちは「いつも通りですけど」と平然と答えた。


 「素晴らしい返事」――そんな陳腐な言葉では収まらない。それは、彼女たちの三年間の軌跡そのもの。筆を持ち、挑み続けた日々のすべてが、一声に凝縮されていた。会場中の心を打ち震わせた、あの返事。彼女たちの高校生活は、まさに部活動と共にあった。そして、その魂のこもった一声が、未来へと羽ばたく彼女たちの門出を鮮やかに彩った。



2025年2月28日金曜日

絆を受け継ぐ刻(とき)

 春の訪れを告げる風が、校舎の窓を優しく揺らす。大曲高校では、明日の卒業式に先立ち、本日、同窓会青麻会への入会式が執り行われた。


 会長をはじめ各支部長の方々が見守る中、同窓会長が餞(はなむけ)の言葉を贈る。先輩たちが築いてきた伝統の灯を、新たな世代へと託す瞬間。静寂の中に響くその言葉は、一人ひとりの胸に深く刻まれた。


 そして、新入会員へ記念品が手渡されると、代表の生徒が壇上に立ち、未来への抱負を力強く語る。その声には、学び舎で育まれた誇りと決意が宿り、ここから始まる新たな航路への覚悟が滲んでいた。


 こうして、時代を超えて受け継がれる絆が、またひとつ、確かなものとなった。






2025年2月26日水曜日

またまた

 先日、賞状の記名を盛大に間違えたばかりなのに、またミスをやらかした。卒業式に向け、来賓席の前垂れを揮毫した。本校には書道担当の教員(私)がいるので校内の案内や式場の案内や掲示はワープロなどは一切使わせず、すべて私が書いている。書道担当教員の意地である。


 何カ所かに掲示するので、綺麗な紙を使ったり大きさを変えたりできるように、原稿を書いてコピーができるようにした。決して、※ひこがしたわけではない。ここで、余計な斟酌をして「掲示の係の先生が楽できるように必要な分をコピーしておこう」と思った。ところが、切り分けたら切り口がガタガタ。仕方なくもう一度コピーを……と思ったら、切ったのはオリジナル原稿だった。※「あやすか」

 仕方がないのでもう一度書き直した。写真は引いた罫線が見やすくする昭和からの相棒のトレース台。通販で買ったが、送り先の郵便番号が5桁である。

※ひこがすー「怠ける」や「手を抜く」の意の秋田弁。

※あやすかー英訳すると「Oh my god」の秋田弁。



2025年2月24日月曜日

発表の場

 昨日、私も出品した県展地域展が終了した。最近の県展における中学生や高校生の活躍は素晴らしいことだが、その一方で、大人のアマチュアにとっての発表の機会が減少している現状には矛盾を感じる。


 若い世代の活躍を推進するあまり、仕事の合間を縫ってコツコツと取り組んできた大人のアマチュアが、その成果を発表する貴重な舞台を奪われているのは本来の姿ではない。中学生や高校生には「U18」などの新たなカテゴリーを設けるべきであり、それによって若い世代の活躍の場を確保しつつ、大人のアマチュアにも十分な発表の機会を与えることができるはずだ。




2025年2月23日日曜日

「書道をやりにきました。」

書道をやりにきました

 偶然見つけたローカル線の動画。それは、彼女が毎日乗っている列車だった。窓の外に広がるのは田園風景。何気なく過ぎていく景色の中に、彼女の決意がある。乗り継ぎをしてまで通う理由を問われたら、答えはただひとつ——「書道をやりにきました。」それ以上の説明はない。筆を握るためにこの学校を選び、遠回りでも迷わずこの道を選んだ。

 今年の夏、上級生が引退すれば彼女は部長となる。受け継ぐのは、ただの役職ではない。代々の先輩たちが積み上げてきたもの、大切に守られてきた伝統、そして何より、自らが磨き上げてきた筆の魂。そのすべてを背負い、さらに先へと進んでいく。

 駅に降り立ち、校門をくぐるたびに、彼女は確かめる。ここに来た理由を。筆に込めた想いを。そして、どこまでもまっすぐに——「書道をやりにきました。」



2025年2月21日金曜日

賞状と私の果てしなき戦い

  一昨日、賞状を書いて信じがたいミスをやらかした。リベンジを誓い、吹雪の晴れ間を縫って賞状用紙を買いに行く。幸いにも本文も自分で書いていたので、ついでに書き直した。

 そもそもの発端は、少しでも楽をしようとスケベ根性を出したことにある。だから今回は潔く「○○○○生の部」を筆で書くと決め、印刷原稿には入れなかった。原稿ができて、そして印刷。慎重に位置合わせをして「よし、完璧!」と、ついに量産体制に突入しようとした――その時、異変に気づいた。なんか変だ。

……天地が逆さまだった。

 一瞬、時が止まる。なんということだ。己の馬鹿頭はどこまでイカれているのか。愕然としつつも、最悪の事態を回避できたことに安堵する。

 気を取り直し、無事に印刷が完成。明日は記名作業だ。だが、この戦いが本当に終わるのかは、まだ誰にもわからない。

あんびりーばぼー」一昨日の信じがたいミスはこちら。



2025年2月19日水曜日

あんびりーばぼー

 賞状用紙が届いた。昨年、「小学一年生の部」をすべて筆書きし、あまりの面倒くささに泣きを見た。そこで今年は少しでも楽をしようと、「○○○生の部」と最初から印刷しておけばいいという画期的な(?)手法を思いつく。小学生でも中学生でも高校生でも対応できるじゃないか! これは勝ったも同然だ!

 さっそく筆を執り、心地よい筆の滑りを楽しみながら一区切り。順調そのもの。ふと作品を見直すと、そこには堂々とした文字が並んでいた。

「小学一生の部」

「?」……「年」が、ない。

 一瞬で血の気が引いた。「小学一年生」ではなく「小学一生」――まるで一生小学生のまま抜け出せない呪いの賞状になってしまった。

 予備の用紙では到底足りない。「間違えたので印刷しなおしてください」とも言いにくい。ならば、自分でやるしかない。明日、新しい賞状用紙を買い、本文を印刷し直し、再び筆を執ることに決めた。

 だが、一つだけ確信した。「○○○生の部」と楽をしようと本文の印刷原稿を書いたときに、スケベ根性を出したことが今回の悲劇の幕開けだったのだ。最近このような考えられないミスが多い。


2025年2月18日火曜日

環境を守る書道の手

 大曲高校書道部は「第15回ニチバン巻芯エコプロジェクト」に参加し、感謝状を受領した。このプロジェクトはセロハンテープや布粘着テープの巻芯を回収し、リサイクル資源として活用する環境保全活動で、全国の学校や団体が協力している。

 書道部は書道パフォーマンス用の巨大な紙を作成する際に使う巻芯を回収し始め、「紙と向き合う者として、使い終えたものにも新たな役割を与えたい」という思いから回収を始め環境保護の意識を持ちながら継続的に取り組んできた。そして、廃材だった巻芯が新たな資源となることを願いながら提供し、その活動が評価された。また、反故紙の再利用など、資源を無駄にしない工夫も行っている。書道部は、今後も書の表現と環境への配慮を両立させて活動を続けていく。




2025年2月16日日曜日

証書ニ記シ終エタリ

 疲レヲ知ラズ

手ヲ止メルコト無ク

筆ヲ執リテ名ヲ記ス

春ノ光ヲ想ヒ

旅立ツ若人ノ名ヲ

一ツ一ツ確カメツツ

雑念ニ惑ワサレズ

慣レタ手ツキデ書キ進メ

終ワレバ静カニ筆ヲ置ク

アア 今

達成ノ息ヲ吐キ

机ニ指ヲ走ラセバ

滑ラカナル紙ノ温モリ

ヤリ切ッタリ

清々シキ心持チニ

ナリタリ



2025年2月15日土曜日

果てなき白

 筆を執る、幾度も。

紙の海に、名を刻む。

ひとつ、またひとつ。

幾千の夢を背負ひ、墨は流れ、筆は舞ふ。

終はりは來るのか。

幾許の時を越へても、

目の前の白は尽きることなく、

新たなる名が、またひとつ。

これは旅路か、修行か。

書けども書けども、終はらぬ道。

されど、ひと筆ごとに魂を込め、

送り出す、未來を抱く手のひらへ。

筆を執る、幾度でも。

夜が明けるまで、墨が乾くまで。

そしてふと、白き海の果てに、

最後の一枚が、静かに待つ。



2025年2月13日木曜日

シャレた記念品

 息子が高校生の頃、保護者としてPTA総会に出席した。そこで、退任される役員に感謝状とともに記念品が贈られた。記念品は画家が描いた絵だった。私はその洗練された記念品に感銘を受け、自分も特別な場面では自分で書いたものを贈りたいと思った。

 私は幸運なことに母校に勤務し、同窓会の校内幹事長を務めている。退任される同窓会役員や部活動でお世話になった方には、色紙を揮毫し額に収めて贈ることにしている。たとえ拙い筆であっても、額におさまれば不思議とそれなりに見えるものだ。しかし、それ以上に、私の書が「感謝」と「出会いの大切さ」を伝えることができれば、それこそが何よりの贈り物になるのではないかと思う。

 以前、小学校のPTA会長を3年務め退任する際、いつもそうしているように感謝状を書いた。そして、自分で書いた感謝状を受け取った。



2025年2月11日火曜日

スピードスター

  高校生の頃からお世話になっていた先生によく「そくひつだ」と注意された。私は「※側筆」だと思って、「いつも筆は立てて書いているけどなあ」と疑問だった。しかし、何年も経ってからようやく気がついた。「そくひつ」とは「側筆」ではなく「速筆」、つまり書くのが速すぎると注意されていたのだと。


 もともと堪え性がなく短気な私は驚くほどの速さで書く。かつては6クラス分の卒業証書を一晩で仕上げたこともある。しかし最近は、賞状を書く際に筆を硯に引っかけて用紙に墨を飛ばしたり、画がくっついたりと、信じられないミスをすることが増えた。そこで、さすがに少しは落ち着こうと意識し、ゆっくり書くようにしている。


 少し大人になったかな。……と思った矢先、仕上げたばかりの賞状の上に、袖がスーッと滑り込んだ。そう、乾く前に触ってしまったのだ。どうやら、落ち着いても別の問題はついてくるらしい。


※側筆(そくひつ)とは、書画において筆を傾けて穂の側面を用いて書く用筆法。これは基本的に書の線としては悪い線と言う人もいる。



2025年2月10日月曜日

こだわり

 書道展など筆文字の魅力を伝える場において、その趣旨にふさわしい在り方があるのではないか——そんな時にこだわりがある。

 たとえば、書道展の賞状。書家が関わる催しでありながら、賞状がワープロで作成されるのはどこか違和感を覚えてしまう。せっかく筆文字の美しさを称え広める場であるのだから、その証として授与される賞状もやはり毛筆であるべきではないかと思う。

 そんな思いから、それを提案して賞状の本文や記名を書く機会があれば、迷わず引き受けることにしている。やはり、書の世界に生きる者として、こうした場こそ筆の文字が息づいていてほしい。毛筆で書かれた文字には、手で書くからこそ生まれるパワーがある。それが伝わる場を大切にしたい——それが、私のささやかなこだわりである。

 しかし、こだわって担当したはいいが、書いてみると己の下手さに愕然としてしまう。でも、大丈夫。大曲高校書道室には頼もしい「緑のジャージを着たおじさん」が住んでいる。



2025年2月9日日曜日

強敵出現

 2月になると、いよいよアレとの戦いが始まります。毎年恒例、私の強敵…そう、卒業証書です!世の中いろんな考えがあるようですが、私はこれを書道教師の重要な仕事だと思っています。

 さて、今日の天気はまるで気分屋の神様が操っているかのよう。恐ろしいほどの青空が広がったかと思えば、次の瞬間には猛吹雪!「お天気の神様もお天気屋って言うんだべが?」と、ひとりツッコミを入れつつ、日曜の学校でコツコツ筆を握っています。

 少しは上達したかと思いきや、己の未熟さに毎年愕然…。それでも最後は、緑のジャージを着たおじさんに助けてもらいます。おじさん、お願いします。



2025年2月8日土曜日

丸徳の芋きんつば

 大曲の学校に通っているなら、ぜひ知ってほしい名物がいくつもある。

 さて、今日の大曲高校書道部は2年生が模試のため、1年生だけの活動日。市外から通う部員もいるので、「大曲の学校に通っていて丸徳の芋きんつばを知らないなんて※ばしだ!」ということで、差し入れを決行!


 ふわっと甘くて、ほくほくのお芋の味に、みんな思わずにっこり。「おいしいっ!」の声が次々とあがり疲れも吹き飛ぶ。大曲の味、しっかり心に刻まれたようだ。

※ばし-「ウソ」の意の秋田弁。

(使用例)ばしこぐな→ウソをつくな。



2025年2月7日金曜日

この文化部がすごい

 大曲高校書道部が読売新聞東京支社から刊行された週刊新聞に取り上げられ、それが2020年に書籍化!その名も 『部活魂!この文化部がすごい』。全国の文化部が紹介され、仲間とともに駆け抜けた「10代の本気」が詰まった一冊だ。

 昨日、ふとした瞬間に気づいた。「あれ?今の部員たち、この本のこと知らないんじゃ…?」 そこで部活動中に紹介してみたら、みんな目を丸くして驚き、そして誇らしげにページをめくり始めた。次々と回し読みしながら、「すごい!」「こんなふうに書かれてるんだ!」とワクワクした声が飛び交う。かつての先輩たちの熱い思いが、時を超えて今の部員たちへとつながっていく——そんな瞬間を目の当たりにした。

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2025年2月6日木曜日

緑のジャージを着たおじさん

  旧校舎の書道室には、ひそかに語り継がれる都市伝説があった。「緑のジャージを着たおじさん」が住んでいる——というものだ。書道室に作品を置きっぱなしにすると、夜中にひょっこり現れ、そっと手を加えてくれるらしい。まるで書道界の座敷童。

 

 新校舎に引っ越して1年ちょっと。ふと気づくと、どうやらおじさんも一緒に引っ越してきたようだ。先週、色紙作品を書こうとしたものの、まず墨を擦る時点で失敗。そして昨日、リベンジ。ところが、書いた作品を見て己の未熟さに絶望し、色紙を放置して帰宅。

 

 そして今日、恐る恐る見てみると——あれ? 昨日のへたっぴ色紙が「え、いいじゃん?」な仕上がりに!?

 

 どうやら、新校舎の天井にも、あのおじさんは健在のようだ。

「新しい住み心地はいかがですか?」

おじさんのジャージは昭和チックなデザインで、2本線が入っているヤツらしい。



2025年2月5日水曜日

吹雪の中のエール

今日は銀行や支払い先をまわりました。その道すがら、思いがけず多くの方に声をかけていただきました。「大曲高校書道部、大活躍ですね」「頑張ってください!」――そんな温かい言葉をいただくたびに、不思議な気持ちとともに胸が熱くなりました。

 

日本列島に寒波が来襲した今日は、全国から雪のニュースが伝わってきました。大曲でも時折青空がのぞくものの、時々猛吹雪で前が全く見えなくなるほどの荒れた天気でした。そんな中でも、「応援しているよ」と声をかけてくださる方々がいて、その言葉が寒さを忘れるほど心に沁みました。このような猛吹雪は、強豪ひしめく大会の中での私たちのようです。逆境に負けず、一歩ずつ前進していく姿勢を大切に、これからも頑張り続けます。

 

私たちは、ただ書に向き合い、自分たちのやりたいことに夢中になっていただけでした。けれど、私たちの活動は思いのほか市内の多くの方の目に映り、心に届いていたのだと気づかされました。支えてくださる皆さんの存在を知り、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。これからも、自分たちらしく精いっぱい筆をふるっていきます。応援、本当にありがとうございます!



2025年2月4日火曜日

あぴーる

 秋田県には芸術科書道を担当する教員はごくわずかしかおらず、まるで絶滅危惧種のような存在です。そんな状況の中で、その価値を少しでも広めるために、私は賞状への記名をはじめ依頼があれば二つ返事で引き受けています。講演会の演題や校内の案内掲示など、さまざまな書き物を手掛けています。やはり、手書きの文字には人のぬくもりと力が宿るものです。こうして地道に書の魅力を伝え続けています。  先日も、賞状への記名を依頼されました。もちろん快く引き受けすぐに書き上げました。表彰式用の賞状は事前に鉛筆で仮書きされていることが多く、名前を確認しメモした後、消しゴムで下書きを消してから毛筆で清書するため意外と手間がかかります。しかし、今回の賞状は付箋に下書きされており、メモ書きや消しゴムを使う必要もなかったためとても楽に仕上げることができました。  賞状を書くときは、ただ文字を並べるのではなく、その賞を受け取る生徒の努力や喜ぶ姿を思い浮かべながら筆を運びます。「おめでとう、よく頑張ったね」という気持ちを込めて書くことで、文字にも魂が宿ると信じています。そんなふうに、少しでも手書きの魅力が伝われば嬉しいものです。

#竹村天祐#大曲高校#大曲高校書道部#青麻会



2025年2月2日日曜日

彩るー楽哉

 秋田県書道連盟新春小品書展が1月30日から2月2日まで、秋田市の秋田魁新聞社1階の「さきがけホール」で開催されており、これに出品しています。出品作品は半紙に書いた「楽哉」。新しい一年が喜びに満ちたものになるよう願いを込め、この字を選びました。
 もともと私は王鐸や張瑞図など、明清時代の行草を主に取り組んでいましたが、最近は篆書の造形の面白さにも魅力を感じています。そんな中、先日開催された書道パフォーマンスグランプリ決勝大会では、本庄東高校が優勝。その紙面は従来のカラフルなものではなく白黒で構成されておりその発想に驚きました。パフォーマンス書道といえば色彩を用いた演出が主流ですが、今回のように「常識を覆す」構成にびっくりしました。
 それならば逆に、白黒の書道作品に色を添えたら、新年らしい希望を表現できるのでは? そう考え作品に彩りを加えました。より楽しい「楽」にするために。
「えっ、なんで青と黄と赤なの?」
「うん、それしか手元になかったんだよね!」
 偶然の色選びもまた、楽しさの一部。新春らしい晴れやかな気持ちが伝わるよう、筆を運びました。今年も、書の探求を続けながら、新たな表現に挑戦していきたいと思います。




2025年1月30日木曜日

心に刻むひととき

 1月19日より イオンモール大曲1階 市民ギャラリー にて開催しておりました 創部70周年記念 大曲高校書道部作品展 は、多くの方に見届けていただき幕を下ろしました。

 作品の前でじっと見つめる方、言葉を交わしながら指差す方、懐かしそうに頷く方、そのすべての瞬間が、私たちにとって何よりの宝物です。「すごいね」「じょうずだね」そんな声をいただくたびに、書に込めた想いが届いたのだと胸が熱くなりました。
 ご来場くださった皆さま、そして開催を支えてくださったすべての方々に、心より感謝申し上げます。書は一瞬で消えるものではありません。私たちの筆が刻んだものが、皆さまの心のどこかで息づき続けることを願いながら、これからも挑み続けます。どうか、これからの歩みも見届けてください。ありがとうございました。






2025年1月29日水曜日

書は長寿の秘訣!?~生涯書道家であるために~

  1月26日(日曜日)、メトロポリタン秋田で開催された秋田県書道連盟の新年研修会と新年会。私は研修部長として、研修会を担当しましたので、会場の横看板と演題も書きました。今回の講師は書道連盟の会員で整形外科の先生にお願いし、「生涯書道家であり続けるために~その傾向と対策~」というテーマでお話を伺いました。

 講演は大好評で、特に「書道を趣味にしている人は長生きする」という研究結果には驚きました!なるほど、書道連盟のベテランの皆さんが元気な理由がわかりますね。でも、これからはもっと若い会員さんにも仲間に加わってもらいたいなと感じた一日でした。みなさん、充実した人生のために一緒に書道に親しみましょう。

▲会場の横看板と演題

▲講演会の様子




2025年1月28日火曜日

明後日まで

 創部70周年を迎えた大曲高校書道部の記念作品展が、いよいよ明後日で最終日を迎えます。この節目を彩る作品展では、部員たちの熱い想いが込められた一つひとつの書が、訪れる皆さまの心に響いております。未だご覧いただけていない方も、ぜひこの機会に足をお運びください。

 会場はイオンモール大曲1階「市民ギャラリー」(GU隣)にて開催中です。時間は午前10時から午後9時までとなっております。
ショッピングの合間にもぜひお立ち寄りいただき、伝統と情熱が詰まった書の世界をご堪能ください。最終日まで、多くの方々のお越しを心よりお待ちしております!



2025年1月27日月曜日

書の深みと向き合う一日

 1月25日は意義深い一日となりました。

午前中は部活動に励み、部員たちとともに作品の完成度を高めるべく熱心に取り組みました。
 午後からは、競書雑誌の月例審査会と書きぞめ展の審査会に参加しました。一生懸命お稽古に励んだ作品が並ぶ光景は、心に響くものがあります。作者の努力と思いが込められた作品を、真剣に丁寧に拝見し、集中して納得のいくまで見直しました。審査の際は作品の文字の一画一画に込められた技術と情熱を感じ取りながら、評価に対して責任を持つことを心がけました。
 自分の経験や感性を頼りに作品に向き合う中で、書の奥深さを改めて実感しました。同時に、審査を通して新しい気づきを得られたことは、自身の成長にもつながる貴重な時間でした。
 これからも、書の魅力を伝える一助となれるよう、さらなる精進を重ねていきたいと思います。



2025年1月24日金曜日

筆に込める新春の気概

 秋田県書道連盟の研修部長の私は、新年研修会に向けて会場の横看板を揮毫しました。看板の長さに対して字数が少なかったため、横長の字形が映える隷書体を選びました。普段は物事をテキトーに進める私ですが、このような看板を書く際には一転して几帳面になります。設計図を丁寧に作成し、字配りを計算し尽くして、全体のバランスがぴったりと整うよう精密に書き上げました。

 書道連盟の会員の研修会ということで、出席するのは当然ながら書道に取り組む専門家の方々ばかりです。特に隷書を専門にされている方も多い中で、隷書でこの横看板を書くのには「けんか売ってんのか」のような気もしますが、、.。正直なところ少し躊躇はありますが「これくらいしか書けない」と開き直り、今の自分にできる精一杯の気持ちを込めて筆を運びました。
 完成した看板を改めて眺めてみると、どこか足りない部分があるかもしれないとも思いますが、それでも自分なりの一歩として満足しています。この看板が、新年の研修会に集う方々の目に留まり、会場の雰囲気を彩る一助になればと願っています。
 私にとって、こうした挑戦は書道への取り組みを見つめ直す貴重な機会でもあります。自分の書が、研修会の場で批評を受けることもまた成長の糧になるでしょう。今年も筆を持つたびに新たな発見と喜びを得ながら、さらに前進していきたいと心に誓いました。



2025年1月21日火曜日

仙北地域展

 第22回仙北地域展(秋田県美術展覧会)は、2025年1月18日(土)から2月23日(日)まで、美郷町学友館で開催されます。 この展覧会は2024年6月に開催された第66回秋田県美術展覧会(県展)の入賞・入選作品の中から、美郷町・大仙市・仙北市の作家の作品が展示されます。私の作品「戦乱の国」は奨励賞を受賞し会場に展示されています。

 最近の県展における中学生や高校生の活躍は確かに素晴らしいことですが、その一方で、大人のアマチュアの発表の機会が減少している現状に矛盾を感じています。若い世代の活躍を推進するあまり、大人のアマチュアが仕事の合間でコツコツと取り組んで来た成果を発表するその貴重な舞台を奪われていることは本来の姿ではありません。中学生や高校生には、「U18」などの新たなカテゴリーを設けるべきで大人のアマチュアの。これにより、若い世代が活躍する場を確保しつつ、大人のアマチュアにも十分な発表の機会を与えることができるはずです。
会  期:2025年1月18日(土)~2月23日(日)
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日
会  場:美郷町学友館(秋田県仙北郡美郷町六郷字安楽寺122番地)
入館料:一般300円(10人以上の団体は1人200円)、高校生以下無料。障害者手帳またはミライロID提示の方は1人200円。





2025年1月20日月曜日

愛校心が繋ぐ絆と温かな贈り物

  大曲高校書道部は創部70周年を迎え、その記念作品展を昨日よりイオンモール大曲1階「市民ギャラリー」にて開催しています。本日、会場には豪華なお花が届きました。その送り主は千葉県にお住まいの大曲高校の卒業生の方です。

 実はこの方、先日イオンモール幕張新都心で開催された「書道パフォーマンスグランプリ決勝大会」に、東北・北海道代表として出場した書道部の情報を知り、書道部とは直接の関わりがないにもかかわらず、わざわざ応援に駆けつけてくださいました。そして、今回の展覧会にも心を寄せてくださり、花を贈ってくださったのです。その愛校心と温かいご支援には、心から感謝申し上げます。






2025年1月19日日曜日

巨大な筆に込めた想い

 大曲高校書道部は令和7年1月19日、創部70周年を記念した書道部作品展初日にワークショップ「メガ文字アート」をイオンモール大曲1階「稲穂の広場」にて実施しました。


 このイベントでは、大きな筆を使って巨大な紙に自由に文字を書く体験を提供しました。小学生からベテランの方まで、幅広い世代の参加者が思い思いの文字を描き、会場には笑顔と熱気が溢れました。初めて筆を手にした方も、力強い筆運びで自分だけの表現を楽しんでいただきました。


 特に、家族や友人と協力して一つの文字を仕上げる場面では、参加者の笑顔が印象的でした。完成した巨大作品は、参加者全員の個性がひとつに重なり合い、迫力と温かみのある仕上がりとなりました。


 このワークショップを通じて、書道の楽しさや表現の自由さを改めて感じていただけたのではないでしょうか。大曲高校書道部では、これからも地域の皆さまと共に、書道の魅力を伝えてまいります。







70年の歩みと新たなる挑戦

 大曲高校書道部は令和7年1月19日から30日まで、創部70周年を迎えた記念としてイオンモール大曲1階「市民ギャラリー」にて作品展を開催しております。本展覧会では、部員たちが日々の鍛錬を重ね、一筆一筆に想いを込めた作品を展示しています。


 展示作品は高校総合美術展書道部門に出品された17点の力作が並び、部員たちが練習を重ねて磨き上げた技術や表現力が光っています。また、大仙市誕生20年をお祝いするために制作した巨大作品には、地域への感謝と未来への希望が込められています。さらに、「大仙市新春子ども書き初め大会」で各学年の最優秀賞に輝いた作品も展示。子どもたちの純粋な筆づかいと、次世代を担う才能が来場者の心を打つことでしょう。


 部員たちはこの展覧会に向けて懸命に準備を進めてまいりました。一人ひとりが書道への情熱を持ち、伝統を大切にしながらも新しい挑戦を続けています。その熱意が感じられる展示となっておりますので、ぜひお越しいただき、書道の魅力に触れていただければ幸いです。


 展覧会は本日より今月30日まで市民ギャラリーで開催しております。多くの皆さまのご来場を心よりお待ちしております。




2025年1月13日月曜日

雪國

 トンネルを拔けると、そこは雪國であつた。降りしきる雪に音を吸はれた靜寂の中、大曲高等學校書道部を乘せたバスは、ひつそりとした山間の道を進んでゆく。車窓に映るのは、何處か懷かしい家々の風景。次第に故鄕の氣配が濃くなり、遠く離れてゐた日常が靜かに手元へ戻り始める。書に込めた熱意とともに過ごした決勝大會の時が、ひとつの輪となつて胸の內に刻まれるやうであつた。

 此の旅路はもうすぐ終はりを迎へるが、次なる舞臺への扉は、すでに新たな光を宿してゐる。



2025年1月12日日曜日

バスで来た

 「実はバスの免許、取っちゃいました!

 でも、さすがに千葉まで運転するのは少しハードルが高いんです。今回の決勝大会に向けて、私がバスを運転して千葉まで乗りつけたと思われている方が意外と多いみたいで、『え、本当に!?』なんて驚かれることもあります。でも残念ながら、その伝説はまだ未実現。いつかそんなドラマを作れる日が来るかもしれませんが、今のところは安全第一で、プロにお任せしています!」


全力

 大曲高校書道部は、イオンモール幕張新都心で開催された第4回書道パフォーマンスグランプリに東北・北海道代表として出場しました。力不足は否めないものの、自分たち史上最高の演技を披露することができました。また、首都圏在住の同窓生や書道部の先輩方、さらには保護者の皆様から温かい応援をいただき、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。これからも新たな挑戦に向けて歩みを進めてまいります。



祖父の激励

  決戦の朝、千葉のホテルのレストランにはこれがあった。遠い地で祖父が創業したこれが。まるで祖父が背中を押してくれているかのような不思議な気がした。そして、皿にはウインナーを載せた。勝負の日にふさわしい名を冠するウインナー(ウイナー)。この小さな一皿が、今日という大舞台の始まりを告げる合図となった。



2025年1月11日土曜日

到着

 大曲高校書道部、宿舎を飛び立ち一番乗りで会場入り。明日を見据え、今宵は決意を磨く時。筆に込めるは熱き魂、勝負の場に挑む覚悟は揺るがない。



世界征服

 実は私は大曲高校の書道部顧問だが、それは世を欺く仮の姿。本当の正体は、世界征服を目論む秘密組織ショッカー(書家)である。今回の任務は「書道パフォーマンスグランプリ決勝大会」という名目のもと、手下である部員たちとともに首都圏を征服することだ。


 宿泊先のホテルでは、「私は学校で書道を担当している教員で、これ、おみやげです」とフロントに自作の額入り葉書を手渡した。100円均一のお店で買った額に、大曲らしさを象徴する花火の下絵が入った葉書。そこに力強く「愛」の一字を書いた。原価わずか140円(葉書40円+額100円:税抜)でありながら、その背後には深遠な書道作戦が隠されている。贈り物を通じて、学校の印象をさりげなく上げること――これがショッカーの書道の初動作戦だ。書で心を動かし、信頼を勝ち取る。それは小さな一歩に見えるが、着実に征服への足がかりを築いていく。


 ショッカーの最終目標は自分たちの書作品を世界中に展示することで、文字の力で地球を掌握することにある。例えば、以前お世話になっている友人が店長を務める店に、お礼の作品を贈ったときのこと。私は謙遜して「トイレの片隅にでも飾ってください」と伝えた。すると、驚いたことに本当にトイレに飾られていたのだ。「なんて素直なんでしょう」と感心しつつも、私は密かに微笑んだ。トイレというプライベート空間こそが、ショッカーの作品をじっくり眺める理想的な場所なのだから。


 そして、週末には手下たちがさらなる征服を果たすために動き出す。彼女らは巨大な紙を用い、文字通り「大きな足跡」を残すべく、日本有数の規模を誇るイオンモール網張新都心を舞台に、堂々たるパフォーマンスを繰り広げる予定だ。「書の力で世界を変える」という壮大な夢に向け、部員たちは無邪気に、しかし着実に計画を進めている。


 こうして私は表向きは教育者として裏ではショッカーとして、今日も筆を握る。征服の道はまだ遠い。しかし、書という静かなる武器を携え、私たちは確実に世界を塗り替えていくのだ。つづく。



2025年1月8日水曜日

熱き想い

 大曲高校書道部は書道パフォーマンスグランプリ東北北海道大会で優勝し、今度の日曜日に決勝大会へ挑みます。これまで個人の活動が中心だった書道ですが、書道パフォーマンスは部員全員で挑む団体戦。その鍵を握るのは、何よりもチームワークです。決勝大会を目前に控えた今日は、特別強化練習を実施。市内のお肉屋さんにオーダーした特製トン汁をナベごとテイクアウトし、新年補習初日の恒例行事としてみんなで味わいました。

 湯気の立つトン汁がひとつの鍋に集うように、私たちの心も一つに――この熱き想いを、決戦の舞台で爆発させます!

▲盛り付けて