2020年11月28日土曜日

【書友1月号(R03)】十七帖の断筆について 

 一般漢字半紙段位課題「十七帖の断筆について」

学習用「三井本」十七帖

□断筆とは何か

 断筆(だんぴつ)とは三井本にある用筆法で、画の転折部分でいったん筆を離し、そこよりわずかに位置を移して筆を入れ直し次の画を書く書き方を言います。

 王羲之の十七帖の真跡はすでになく、今日残っていて書として優れ拓本として良好なものに「 三井本」、「上野本」と呼ばれているものがあります。同じ十七帖でも「三井本」と「上野本」の両者を比べてみると書風が異なり、文字の形なども違いがあります。

 断筆は真跡にはなかったと思われます。断筆は『 十七帖』を学ぶ人のために運筆の様子がよくわかるようにと手を加えて石に彫り直したと考えられています。


          ▲上野本             ▲三井本


 草書は行書を崩してさらにそれを簡略化して生まれたのではなく、楷書と共に隷書から発達したものと言われています。同じ草書でも孫過庭の書譜や智永の千字文が点画が曲線的であるのに対し、王羲之の十七帖は点画が直線的です。それは王羲之はその楷書の書き方が完全に抜けない形というよりも、楷書の書き方をも取り入れた草書の完成へと進めていったのかもしれません。また、隷書的な書き方も取り込んでいます。十七帖の書き出しの部分は相当注意を払って書き始めたと思います。これには隷書のような書き方です。

□臨書するときに断筆はどうすればいいのか
 断筆で何を教えようとしたのでしょうか。それは「リズム」です。書くリズムの起点をつくるために断筆はあると思います。書道史時代的背景から楷書的な書き方をする草書にリズムを持たせるために、断筆はそのスタート地点です。
 断筆部分では原本のように筆を位置をずらして筆を入れ直して書いてもいいし、その場で一端筆を止め同じ位置から書き進めてもかまいません。大切なことは運筆の流れるようなリズムで書くということです。

▲臨書例




2020年11月20日金曜日

蜀素帖筆順研究

 筆順がわかりにくい字を研究してみました。









蜀素帖釈文研究


▲蜀素帖「呉江垂紅亭の作」

◇原文

断雲一片洞庭帆  断雲一片洞庭(どうてい)の帆(はん)

玉破鱸魚金破柑  玉(ぎょく)は鱸魚(ろぎょ)を破(やぶ)り金は柑(かん)を破る

好作新詩継桑薴  好(よ)し新詩(しんし)を作りて桑薴(そうちょ)を継ぎ

垂虹秋色満東南  垂虹(すいこう)の秋色 東南に満つ

泛泛五湖霜気清  泛泛(はんはん)たる五湖 霜気(そうき)清く

漫漫不弁水天形  漫漫として弁ぜず水天の形

何須織女支機石  何ぞ須(もち)いん織女の支機石(しきせき)

且戯常娥称客星  且(いさ)さか常じょうが)に戯れて客星(かくせい)と称せん

時為湖州之行   時に湖州の行を為す


◇通釈(あきた弁ばーじょん)

洞庭湖さある 白い帆みでった ちぎれだ雲

鱸魚(すずき)の刺身だば 玉を割ったみでったども、柑は金割ったみでったぐきれーだ

へば、あだらしく詩つぐったら 機織りの仕事続けるべ

この垂虹亭さは 江南の秋が えっぺあるど

ぱんぱんじぐ 水ある五胡さ、霜の降るみでったぐ さび〜

へっへど ひれー水だば、空ど区別でげね

なして よんだべ、織女の機織りさ 使ったって言われでらった支機石が

しばらぐ天の川で嫦娥(月)と遊んでで客星って言うべ


蜀素帖筆路研究1

第60回「令和3年度全県新年書きぞめ展」の「高校・一般」半紙の部、漢字課題の米芾の書いた蜀素帖「呉江垂紅亭の作」の研究をします。最初に筆路研究をします。

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▲課題「蜀素帖」

▲筆路を研究してみた

2020年11月2日月曜日

美意識に殉じる

 秋田書道展が開催中です。4日まで、秋田市アトリオンです。私はエラそーに無鑑査会員で出品しています。タイトルは「決意 本気モード全開の書道ガールズへ」です。「私たちは諦めない 想いの華よ紙に咲け」と書いています。

▲「決意 本気モード全開の書道ガールズへ」

 その書道ガールズは日曜日に、野球でいえば甲子園予選、運動部でいえば全県総体にあたる高校総合美術展書道部門への出品作品の清書を終えました。この展覧会で来年和歌山で開かれる全国総合美術展に出品する「秋田県代表4点」が選出されます。

 さあ、清書が終わってからは私の仕事です。今まで作品添削に追われて、制作が遅れに遅れていた印19顆を昨日と今日で一気に彫ったので清書作品に押します。今日の早朝、なんとかミッション終了しました。
 私は「しっかりとした印をキッチリ押している作品はウマい」と思っているので、生徒作品の印は私がキッチリと押しています。しかし、そのような美意識を持っている人が書いた作品に、自分で印を押すから作品がウマいのであってこれだとダメじゃん。って最近、それに気がつきました。

 とにかく、生徒作品の漢字用の印を8顆と、調和体の印を11顆を清書の最終選別と平行して二日間でしあげました。そのたの、腕からなにからバキバキです。私たちは漢字の印は一寸(一片が3センチ)を使っているので、そのまま調和体の作品に押すと違和感があります。そのため、調和体の作品には現代的な作風で、八分(24ミリ)の印を使っています。
 今日の朝一番で、表具屋さんに無事印を押した作品を届け、授業に間に合うように高速道路を学校へと向かっていました。その途中で高速道路の横の空中を、昭和の汽車が走っているのが見えました。まるで、銀河鉄道です。もしかして、居眠り運転でもしてお迎えか?とも思いましたが、そんなことはなく無事学校に着き4時間目で蘭亭序の授業をしました。
 生徒が全力で作品を作品を書いたので、私も全力でそれを応援しよう。そう考えて印を彫ることにしています。生徒作品に直接私が筆で手を加えることはできませんが、それに押す印を彫ることはおっけいです。F1ではシャーシはシャーシ、エンジンはとエンジンと別々のメーカーが担当してますが、フェラーリだけはシャーシもエンジンも両方自分たちで作っています。
 「お手本も印も」と高校書道界のフェラーリを目ざしましたが、お手本も印もちょっとぺたっぴで「へらーり」です。